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チーム練習の設計 -- スクリムとVODレビュー

チーム練習の設計 -- スクリムとVODレビュー

チーム戦術の知識は、STEP1〜4で一通り揃った。ここからは「どうやって練習するか」の話に入る。

個人技はAim Lab(エイム練習ソフト)を開いて1人で鍛えられる。でもチーム戦術は、チームで練習しないと磨けない。そして「5人でランクマッチを回す」ことと「チームとして練習する」ことは、似ているようで別物。ここでは、チーム練習をどう設計するかを考えていく。

スクリム(練習試合)の効果的な運用方法

スクリムの目的設定 -- 「勝つ」ためではなく「試す」ために回す

スクリム(scrim)は、他のチームと対戦する練習試合のこと。「scrimmage(模擬試合)」の略。ランクマッチとの最大の違いは、「レートに影響しない」こと。だからこそ、新しい戦術やフォーメーションを試す場として使える。

ここが最も重要なポイントで、スクリムを「勝つため」にやっているチームと「試すため」にやっているチームでは、伸び幅がまるで変わる。

勝つことだけを目的にすると、自分たちの得意な動きばかり繰り返す。それはそれで練度は上がるけれど、新しい引き出しが増えない。苦手なサイトの攻め方も、うまくいかないエクセキュートのバリエーションも、試さないまま放置される。

スクリムでは、テーマを1つ決めて臨むのが効果的。

  • 「今日はBサイトの新しいエクセキュートを試す」
  • 「守りのローテーション判断を意識する」
  • 「コールの質を上げる。情報コールの短縮を練習する」

テーマが決まっていると、勝敗にかかわらず「テーマに沿った動きができたか」で振り返りができる。3試合やって全部負けても、新しいエクセキュートの精度が上がっていたなら成果はある。

スクリム相手の見つけ方とスケジュール管理

スクリム相手を見つける方法はゲームタイトルによって異なる。

  • Valorant: Discord(ゲーマー向けのボイス・テキストチャットアプリ)のスクリム募集サーバーが多数ある。「scrim JP」「Valorant スクリム」で検索すると見つかる。FACEIT(対戦プラットフォーム。独自のマッチメイキングとランキングを提供する外部サービス)のチーム対戦機能を使う方法もある
  • CS2: FACEITのチームラダー(チーム単位で参加する対戦リーグ)が主流。Discordの募集サーバーもある
  • Apex Legends: カスタムマッチの開催権限が必要なため、コミュニティ主催のスクリム大会に参加する形が多い

スケジュール管理は、チーム練習を継続するうえで地味だけど重要な要素。「毎週水曜と日曜の21時から2時間」のように定期スケジュールを決めておくと、メンバーの予定調整がしやすくなる。

気をつけたいのが「練習のやりすぎ」。週7で毎日スクリムを回すと燃え尽きる。プロチームでもスクリムは週3〜5回程度に抑えているところが多い。残りの日はランクマッチで個人技を磨いたり、VODレビュー(次の項目で詳しく扱う)に充てたりしている。

チームVODレビューの進め方

ラウンド単位で「何が良かった / 何が悪かった」を共有する手順

VODレビュー(VODはVideo on Demandの略で、ここでは試合の録画やリプレイのこと)は、スクリムの効果を最大化するための振り返り作業。スクリムだけやって振り返りをしないのは、テストを受けて答え合わせをしないのと同じ。

チームでのVODレビューには、いくつかの進め方がある。

全ラウンド通しで見る方式

時間はかかるけれど、試合の流れ全体を把握できる。試合後すぐにやるなら、記憶が新しいから発見が多い。ただし1試合分を全部見ると1時間以上かかることもあるから、メンバーの集中力が持つかどうかが課題になる。

ピックアップ方式(おすすめ)

事前に「見返すべきラウンド」を3〜5つ選んでおく。「エクセキュートが崩壊したラウンド」「リテイクがうまくいったラウンド」「よくわからないまま負けたラウンド」など、学びの多そうなラウンドに絞って見返す。1ラウンドあたり5〜10分で議論すると、30分〜1時間で終わる。

いずれの方式でも、レビューで意識したいのは「原因の深掘り」。

  • 表面: 「Aサイトのエクセキュートで負けた」
  • 1段階掘る: 「スモークの位置がずれて、守り側の射線が通ってしまった」
  • もう1段階: 「スモークを投げるタイミングがエントリーより遅れた。合図のカウントダウンが曖昧だった」

3段階くらい掘ると、「じゃあカウントダウンをもっと明確にしよう」という具体的な改善アクションが出てくる。表面だけ見て「エクセキュート失敗した、次は気をつけよう」で終わると、同じミスを繰り返す。

個人の問題 vs チームの問題を切り分ける視点

VODレビューで注意したいのが「個人のミス」と「チームの問題」を混同しないこと。

たとえば、エントリーが撃ち負けてエクセキュートが崩壊した場面。これは「エントリーのエイムが悪かった」という個人の問題かもしれないし、「フラッシュのタイミングが合っていなくてエントリーが不利な撃ち合いを強いられた」というチームの問題かもしれない。

切り分けの基準は「同じ状況でもう一度やったら、チームとしての動きは改善できるか」。フラッシュのタイミングを合わせれば改善できるなら、それはチームの問題。タイミングが完璧でもエントリーの撃ち合い精度が低かったなら、それは個人の課題。

個人の課題は、その人が個人練習で解決するもの。チームのVODレビューで「お前のエイムが悪い」と言っても改善にはつながらない。チームのレビューではチームの問題に集中して、個人の課題は本人に任せる。この切り分けができるチームは伸びやすい。

チームの弱点分析と練習スケジュール設計

VODレビューを何度かやると、チームの弱点パターンが見えてくる。「Aサイトの守りが毎回崩されている」「ミッドラウンドのコントロールが弱い」「リテイクの勝率が極端に低い」。

こうした弱点が特定できたら、練習メニューに反映する。

弱点ドリルの例

  • Aサイトの守りが弱い → カスタムマッチ(チーム内での練習用マッチ)でAサイトの守り配置を繰り返し練習する。メンバー同士で攻め側・守り側を交代しながら回す
  • コールが雑 → スクリムで「コールだけ意識する日」を設ける。勝敗は気にしない
  • リテイクの連携がバラバラ → 特定のシチュエーション(2v3、3v3など)を設定して、リテイクだけを反復する

練習スケジュールの設計例(週3回チーム練習の場合)

  • 月曜: VODレビュー(前週のスクリムから3〜5ラウンドをピックアップ)
  • 水曜: スクリム(テーマ設定あり。弱点克服メニューを組み込む)
  • 日曜: スクリム(自由対戦。実戦的な感覚で回す)

火・木・金・土はランクマッチで個人技を磨くか、休息に充てる。この配分が絶対の正解というわけではないけれど、「練習→振り返り→改善→再び練習」のサイクルを回す構造になっている。

練習スケジュールで一番ありがちな失敗は「スクリムだけやって振り返りをしない」パターン。量をこなしている感覚はあるけれど、同じミスを繰り返して成長が止まる。スクリム2回分の時間を使うくらいなら、スクリム1回+VODレビュー1回のほうが伸びるチームが多い。

チーム練習は「量より設計」で差がつく

このSTEPの最後に、チーム練習全体に対する考え方をまとめておく。

チーム練習は「一緒にゲームをやる時間」ではない。「チームとして上達するために設計された時間」。この違いは大きい。

設計のポイントは3つ。

  • テーマを決める: 今日の練習で何を改善したいのかを全員が共有してから始める
  • 振り返る: スクリム後にVODレビューを入れて、気づきを言語化する。口頭でもテキストでもいい
  • 次に活かす: レビューで出た改善点を次のスクリムのテーマにする。サイクルを回す

5人のスケジュールを合わせるのは簡単ではない。だからこそ、集まれた時間を最大限に使いたい。なんとなく集まってなんとなくランクを回して「今日は調子悪かったね」で終わる時間はもったいない。

チーム戦術の上達は個人技の上達より時間がかかる。5人分の意識と動きを合わせるのだから当然だ。でも、噛み合い始めたときの手応えは個人技とは比べ物にならない。味方のフラッシュでエントリーが通った瞬間、全員のスモークが同時に着弾した瞬間、リテイクで一気に3人倒して逆転した瞬間。そういう体験が、チームFPSの一番面白いところだと思う。

STEP1からSTEP5まで、FPSのチーム戦術を一通り扱ってきた。個人技の土台の上に連携を積み、攻めと守りの基本を覚え、コミュニケーションを磨き、チーム練習で仕上げる。ここから先は実践あるのみ。仲間と一緒に、一つずつ積み上げていこう。

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